小説一覧
    • 遊郭医光蘭 闇捌き(一) (角川文庫)

    • 宇野 信哉 (イラスト)
    • KADOKAWA / 富士見書房
    • 吉原で開業する医師・光蘭。遊女を治療するかたわら持ち前の医学知識を駆使して事件を腑分けし、公儀が裁けない悪を闇で捌く!
    • チャップリン暗殺指令

    • 文藝春秋
    • 昭和初期、青年将校たちが首相暗殺などクーデターを計画。陸軍士官候補生の新吉は、チャップリンの殺害を命じられた。傑作歴史長編。
    • 文明開化 灯台一直線!

    • 筑摩書房
    • 時は明治2年。日本人を見下すお雇い外国人リチャード・ブラントン、出自ゆえに孤独に生きる通訳の丈太郎、天才発明家“からくり儀右衛門”こと田中久重の3人は長崎伊王島で条約に定められた近代灯台の建設に取りかかる。言葉と文化の壁、牙を剥く日本の地震、予期せぬトラブル……。立ちはだかる困難を前に、男たちは貧しい漁村に光を灯すことができるのか?
    • 引っ越し大名三千里

    • ハルキ文庫
    • 「人無し・金無し・経験無し」の最悪の状況で、果たして姫路播磨から豊後日田への国替えは成功するのか? 上司からの無茶振りに右往左往する武士たちをコミカルに描き、時代劇に新風を吹き込んだ新鋭が描く傑作時代小説。
    • スマイリング! 岩熊自転車 関口俊太

    • 中央公論新社
    • 今つらい人に、笑って泣いてほしい  デビュー作『超高速! 参勤交代』が小説も映画もヒットした土橋章宏さん。新作『スマイリング!』はデビュー前に函館港イルミナシオン映画祭シナリオ大賞グランプリを受賞した作品がもとになっている。 「僕は大学時代にオートバイで北海道をよく走りまわっていたんです。景色がよかったんですよ。社会人になった頃にロードレースが流行りだして自分でもロードバイクに乗るようになり、これは題材にして書かなきゃ、と思ったのです」  函館に暮らす貧しく孤独な中学生・俊太は自転車が大好きだが、別れた父が昔買ってくれたシティサイクル(ママチャリ)は故障寸前、高価なロードバイクを乗りまわすクラスメイトたちの中ではずれ気味だ。しかし商店街のちっぽけな個人商店「岩熊自転車」の主人と出会い、かつて「ツール・ド・フランス」にメカニックとして帯同したこともある岩熊と「ツール・ド・函館」ジュニア部門レースの制覇を目指すようになる。王道のスポ根エンターテイメントだが、俊太のママチャリを岩熊がロードレース用に改造していくシーンなどの機械描写、また「パンチャー(瞬発力で勝負するタイプの競技者)」と岩熊に分類された小柄な俊太が肉体を鍛え上げていくリアルな身体描写が読ませる。 「大藪春彦さんのファンなのですが、大藪さんの描写というのは、銃に関することが延々3ページくらい書いてあったり(笑)。小説には、よく分からなくても書き込むくらいのマニアックなところがあった方がいいんじゃないかな。今回も自転車屋さんやジムトレーナーに取材して、もう、きっちり書こうと思ったんです」  主人公が滑走するときに頭上に流れていく函館近辺の景色がのびやかだ。 「地元の人から色々なコースを案内してもらって写真に撮り、それを見ながら書きました。志賀直哉の『城の崎にて』とか、描写の巧い文学者って物凄く目がいい。僕はそれほど目がよくないので、だったら現代の機械の力を借りて書けば目がいいのと一緒かな、と思って(笑)」  走行中に俊太が発する「ににににににに……!」といううなり声が印象的だ。 「構ってもらえず、ネグレクト気味に育った子供って独自の言葉を呟いたりするんです。母親にかえりみてもらえない彼もそうだろう、と。僕は児童問題や貧困、介護問題などに関心があって、今つらい状況にある人が楽しい気分になる小説を書いていきたいのです」 評者:「週刊文春」編集部 (週刊文春 2017.01.01掲載)